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2026/09/16

コンサルから事業会社に移るとどうなるか|元ベイカレントが、ギャップを正直に書く 

田中麻衣子

本記事には広告(プロモーション)が含まれます。

この記事は、ベイカレント・コンサルティングに2019年から2023年まで在籍した田中麻衣子が書いています。アナリストからコンサルタントまでを経験し、IT・流通領域の案件を担当していました。

私自身も4年で辞めていますし、周囲でも事業会社に移った人がいちばん多かったです。その人たちの「移ってから言っていたこと」を、できるだけそのまま書きます。

辞めるかどうかをまだ迷っている段階なら、先にコンサルを辞めたいと思ったときを読んだほうがいいかもしれません。ここでは、すでに事業会社を候補にしている人向けに書きます。

最初に:事業会社は「楽になる場所」ではない

いちばん多い誤解がこれです。

事業会社に移ると、忙しさの総量は確実に減ります。 そこは本当です。ただ、しんどさの種類が変わるだけで、しんどさ自体はなくなりません。

コンサルのしんどさは「時間」と「密度」でした。事業会社のしんどさは「時間がかかること」と「決まらないこと」です。前者に耐えられた人が、後者に耐えられるとは限りません。

移った人の中で、半年以内に「戻りたい」と言っていた人は、ほぼ全員がこのタイプでした。

何が良くなって、何が悪くなるか

周囲を見ていた範囲で、起きることを整理します。

コンサル

事業会社

稼働時間

案件のフェーズ次第で大きく振れる

安定して減る

意思決定までの速さ

速い

遅い。数か月かかることがある

仕事の範囲

案件の範囲で切られる

自分で広げられる

成果の見え方

納品で区切られる

見えにくい。数年かかる

評価のされ方

半年〜1年で明確に付く

曖昧なことが多い

人間関係

案件ごとに入れ替わる

固定。合わないと長い

この表でいちばん効いてくるのは「人間関係」の行です。

コンサルは、合わない人がいても案件が終われば離れられます。事業会社はそうではありません。同じ人と5年、10年と仕事をする前提になります。これはメリットにもデメリットにもなりますが、コンサル出身者はここを軽く見積もりがちです。

ギャップ① スピードが落ちる

移った人が最初に言うのは、だいたいこれです。

コンサルでは、月曜に論点を立てて金曜に方向を決める、という速度が普通でした。事業会社では、同じことに2〜3か月かかることがあります。

理由は能力の差ではありません。決める人が違うからです。

コンサルの場合、クライアントは「決めるために」お金を払っています。だから会議に決裁者が出てくるし、その場で決まります。事業会社の会議は「決めるための会議」ではなく「決める準備をするための会議」であることが多い。関係部署への根回しが終わっていない議題は、その場では決まりません。

ここで「なぜこんなに遅いのか」と言ってしまう人は、かなり高い確率で浮きます。私の知る範囲でも、それで最初の1年を無駄にした人がいました。

ギャップ② 正論が通らない

コンサルの武器は、構造化された正しい提案です。事業会社ではこれが単独では効きません。

事業会社では、提案の正しさより「誰が言っているか」「誰が困るか」のほうが重い。過去の経緯があり、その施策で困る部署があり、それを進めた人の顔が立つかどうかがある。コンサル時代は、この層をクライアントの担当者が引き受けてくれていたのだと、移ってから気づく人が多いです。

これは事業会社が非合理という話ではありません。外部から入って提言するのと、中にいて実行するのとで、必要な能力が違うというだけです。

ギャップ③ 成果が見えなくなる

コンサルは、納品で区切りが付きます。3か月なら3か月で成果物が出て、評価も付く。

事業会社の仕事は、成果が出るまでに数年かかるものが普通にあります。 途中で評価されるのは「進捗」であって「成果」ではない。

コンサル出身者は短いサイクルで達成感を得ることに慣れているので、ここで手応えを失いやすい。「自分が何をやっているのかわからなくなった」という言い方をしていた人が何人かいました。

対策としては、自分で区切りを作ることです。四半期ごとに自分なりの中間成果を定義して、そこで区切る。これができる人は移行がうまくいっていました。

ギャップ④ 年収

数字の話です。傾向としてはこうでした。

移り方

額面

時間単価

同じ職位相当で移る

やや下がる

上がる

一段下の職位で移る

大きく下がる

横ばい

マネジメント職で移る

横ばい〜やや上がる

大きく上がる

上場前のスタートアップへ

下がることが多い

ケースによる

額面は下がるが時間単価は上がる、というのが基本形です。ここをどう評価するかは、その人の生活設計次第だと思います。

注意したいのは、「一段下の職位で入って、あとから上げてもらう」という移り方です。これはうまくいかないことが多かった。事業会社の昇進は年次と席の空き具合に影響されるので、入社時の職位が数年固定されることがあるからです。

なお、事業会社のIT部門(社内SE)を候補にしている場合は、その職種自体の水準の幅が非常に大きいので、先に確認しておいたほうがいいです。

→ 社内SEの年収の実態

通用するスキル、通用しないスキル

ここはかなりはっきり分かれます。

通用する

通用しにくい

論点を立てる力

資料の美しさ

数字で現状を把握する力

短期でアウトプットを出す速さ(求められない場面がある)

知らない業務を短期間で理解する力

フレームワークの当てはめ

会議を設計して合意を作る力

外部の立場からの提言

大きなプロジェクトの進め方

「正しさ」で押し切る進め方

いちばん価値が高いのは「会議を設計して合意を作る力」でした。事業会社には、この訓練を受けた人があまりいません。論点を整理して、関係者を並べて、順番に合意を取っていく——これができるだけで、かなり重宝されます。

逆に、資料の美しさは驚くほど評価されません。 ここに時間をかけ続けると「丁寧だけど遅い人」になります。

行き先の種類

コンサルから事業会社に移る場合、実際の受け皿はこのあたりです。

行き先

向いている人

注意点

経営企画

全体を見たい人

実行より管理の比重が大きい

事業企画・事業開発

数字を作りたい人

成果が数字で出るぶん厳しい

DX推進・IT企画

IT案件の経験がある人

推進役だが権限がないことがある

PdM(プロダクト)

作ることに関わりたい人

開発の実務理解が要る

PMI・M&A関連

ファームでの経験が直結

案件がないと仕事がない

「DX推進」は募集が多いぶん、当たり外れが大きいです。経営の本気度が高い会社では面白い仕事になりますが、「とりあえず看板を掲げただけ」の会社では、権限がないまま各部署に断られ続ける役回りになります。ここは面接で、「直近1年でその部署が実際に決めたこと」を具体的に聞くのがいちばん確実です。

行き先全体の整理は別記事にまとめています。ITコンサル側に進む場合の話も含めて、比べて考えてみてください。

後悔しやすい選び方

移ってから「しまった」と言っていた人に、共通していたパターンが3つあります。

① 「コンサルを辞めたい」が動機の中心だった

辞めたい理由の解決だけを見て選ぶと、行った先で別の不満が出たときに、また同じことになります。 「何から逃げたいか」ではなく「何をやりたいか」で選んだ人のほうが、明らかに定着していました。

② 会社の知名度で選んだ

事業会社は、同じ会社でも部署によって環境がまったく違います。 会社を選ぶより、部署と上司を選んだほうがいい。面接で会う人が直属の上司になるかどうかは、必ず確認したほうがいいです。

③ 年収だけで比べた

さきほどの表のとおり、額面と時間単価は逆に動きます。額面だけ見て「下がるから見送る」と判断すると、時間単価で得られたはずの選択肢を落とします。

移る前にやるべき3つのこと

1. 自分の案件を「業務」で言い換えておく

「大手小売のシステム刷新PJでPMOを担当」では、事業会社の面接官には伝わりません。「在庫データの持ち方を変えて、発注の判断を週次から日次にした」のように、業務の言葉で言い換える必要があります。ここができていないだけで落ちる人を見てきました。

2. 決めた場面を3つ書き出す

事業会社が知りたいのは「支援した経験」ではなく「自分で決めた経験」です。ファームにいると、決めていたのはクライアントだった、ということが実は多い。書き出してみて出てこないなら、辞める前にその経験を作りにいったほうがいいです。

3. 相談先を、コンサル特化と事業会社側で分ける

コンサル特化のエージェントは、コンサルへの転職には強いが、事業会社側の内情には弱いことがあります。逆も同じです。両方に当たったほうが情報の精度が上がります。

→ コンサル転職エージェントの選び方

よくある質問

Q. 何年目で移るのがいいですか

3〜5年目がいちばん動きやすいという印象でした。それ以前だと「決めた経験」が足りず、それ以降はマネジメント職での受け入れを探す必要が出てくるので、ポジションが限られます。

Q. コンサルに戻れますか

戻る人はいます。ただし事業会社にいた期間が長いほど、戻ったときの職位は上がりにくい傾向がありました。「一度出て戻る」を前提にするなら、期間は短めのほうがいいです。

Q. 事業会社は本当に楽になりますか

時間は減ります。ただし「決まらないこと」への耐性がない人には、別のしんどさがあります。楽になるかどうかは、どちらのしんどさが自分に合うかの問題です。

Q. 未経験の業界に行けますか

行けます。コンサルは知らない業界を短期間で理解する訓練を受けているので、そこは評価されます。ただし、その業界の案件経験が1本もないと説得力が落ちるので、辞める前に近い案件に入っておけると強いです。

まとめ

コンサルから事業会社に移るときの判断を、順番に整理します。

  1. 楽になる場所ではない。 時間は減るが、決まらないことのしんどさに変わる

  2. 額面は下がり、時間単価は上がる。 両方で比べる

  3. 通用するのは「合意を作る力」。 資料の美しさは評価されない

  4. 会社ではなく部署と上司を選ぶ。 同じ会社でも中身が違う

  5. 「決めた経験」を3つ用意する。 支援した経験では足りない

移った人の多くは、1年経つと落ち着いていました。最初の半年がいちばんきつく、そこを越えられるかどうかが分かれ目だったように思います。

そのうえで、そもそもコンサルへの転職自体で後悔しないための考え方は、別記事にまとめています。

→ コンサル転職で後悔しないために

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