「コンサルに転職したい」と思ったとき、最初にぶつかるのがファームの多さです。
戦略系、総合系、IT系、シンクタンク系、財務系。名前は聞いたことがあっても、何がどう違うのかは外からは分かりません。そして違いが分からないまま応募すると、通ったとしても「思っていた仕事と違う」になります。
私は2017年にアクセンチュアへ新卒で入社し、業界横断でデジタル変革を支援する部門でアナリストからマネージャーまでの4年間を過ごしました。この記事では、系統ごとの違いを年収・案件の中身・転職難易度の3つで比較し、自分に合う系統を判断する方法を書きます。
コンサルファームは、大きく5系統に分かれる
系統 | 代表的なファーム | 案件の中心 | 平均年収の目安 |
|---|---|---|---|
戦略系 | マッキンゼー、BCG、ベイン、A.T.カーニー | 経営課題の方針決定 | 1,300〜1,600万円 |
総合系 | アクセンチュア、デロイト、PwC、EY、KPMG、アビーム | 戦略から実装・運用まで | 850〜1,000万円 |
IT系 | 各社のテクノロジー部門、シグマクシス、クニエほか | システム導入・DX推進 | 700〜1,200万円 |
シンクタンク系 | 野村総合研究所、三菱総合研究所、日本総合研究所 | 調査・政策・官公庁案件 | 900〜1,100万円 |
財務・FAS系 | Big4のFAS部門ほか | M&A、財務デューデリジェンス | 900〜1,300万円 |
平均年収の欄だけを見ると戦略系が突出していますが、これは社員構成の違いがそのまま出た数字です。戦略系は人数が少なく上位等級の比率が高い。総合系は規模が大きく若手層とテクノロジー領域の比率が高いので、平均が下がります。
マネージャー以上に限定して比べると、この差はかなり縮まります。平均年収で系統を選ぶのは、判断としてはかなり粗いということです。
系統ごとの実際の違い
戦略系:方針を決めるところまで
経営レベルの意思決定に関わる案件が中心です。プロジェクト期間は短く、2〜3か月で一区切りというサイクルを回します。
入るのは最も難しい系統です。採用人数が少なく、ケース面接の比重が高い。新卒でも中途でも、地頭と論理構成力が正面から問われます。
そして案件の性質上、「決めるところまで」で関与が終わることが多い。実行フェーズに残らないので、方針が実際に機能したかを見届けにくいという特徴があります。ここを物足りないと感じる人もいます。
総合系:戦略から実装、運用まで
戦略の立案から、システムの導入、業務プロセスの設計、運用までを一気通貫で扱います。案件の規模が大きく、期間も年単位になることがあります。
採用規模が大きいため、中途の門は5系統で最も広い。事業会社出身者が業務知識を武器に入れるのも、主にこの系統です。
一方で、案件の中身は実装・運用寄りのものがかなりの比率を占めます。「コンサル=戦略を考える仕事」というイメージで入ると、ここで落差を感じます。
私が実際に在籍して、入る前といちばん違ったのは地味な調整業務の多さでした。関係部署の意見をすり合わせ、資料の粒度を揃え、会議前に根回しをする。分析して示唆を出す時間より、その示唆を通すための時間のほうが長い。これは組織が大きいクライアントを相手にする以上、避けられません。
ここを「顧客を動かすために必要な仕事」と思えるかどうかが、総合系との相性を決めます。
→ 総合系の代表としてアクセンチュアを深掘りしたものはアクセンチュア転職の完全ガイドにまとめました。年収の等級構造、中途の難易度、選考フロー、働き方の実態まで扱っています。
→ 同じ総合系でも、ベイカレントは組織の作りが違います。業界別の部署を持たないワンプール制で、案件ごとにアサインが決まる。さらに営業とコンサルが分業という、他社にない特徴があります。平均年収も約1,350万円(平均年齢31.2歳)と水準が違う。詳細は元社員が書いたベイカレント転職の完全ガイドにまとめました。
IT系:システムとDXが軸
システム導入やDX推進が案件の中心です。総合系のテクノロジー部門と重なる部分が大きく、境界は曖昧になってきています。
エンジニア経験やIT業界の知識がそのまま武器になる系統で、SIer出身者の転職先としても定着しています。年収レンジは職種によって幅が大きい。
案件は本稼働のタイミングで負荷が集中する構造なので、繁忙期の波がはっきり出やすい傾向があります。
シンクタンク系:調査と政策
官公庁案件や産業調査が中心です。腰を据えて一つのテーマを掘る働き方で、民間ファームに比べると案件のスピードは緩やかです。
リサーチ能力と文章力の比重が高く、修士・博士号を持つ人の比率も他系統より高い。研究職的なキャリアからの転身先としても機能します。
財務・FAS系:M&Aと財務
M&Aのアドバイザリー、財務デューデリジェンス、事業再生などが中心です。会計士資格や財務経験が強く効きます。
案件がディールのスケジュールに支配されるため、クロージング前に負荷が集中する構造です。
どの系統が自分に合うのか──判断の3軸
系統選びは、次の3つで決めるのが現実的です。
軸①:どこまで関わりたいか
方針を決めるところまでで良いなら戦略系。実際に動くところまで見届けたいなら総合系・IT系。
ここが最も大きな分岐です。「戦略を考えたい」と思って総合系に入ると実装の量に驚き、「変わるところまで見たい」と思って戦略系に入ると関与の終わり方に物足りなさを感じます。
軸②:何を武器にするか
地頭と論理構成力で勝負するなら戦略系。業界の業務知識で勝負するなら総合系・IT系。
事業会社で10年業務を回してきた人が戦略系のケース面接で戦うのは、正直に言って分が悪い。逆にその業務知識は、総合系では即戦力として評価されます。
実際、総合系の中途入社者の最初の配属は、前職と同じ業界の案件になることが多いです。業界の言葉が通じる人をそこに置くほうが立ち上がりが速いからで、これは応募時のアピールにも使える情報です。
軸③:働き方の波にどう耐えるか
どの系統も「常に激務」ではありませんが、山の形が違います。
系統 | 山の形 |
|---|---|
戦略系 | 2〜3か月サイクルで山が何度も来る。一つひとつは短い |
総合系・IT系 | 本稼働直前に大きな山。安定運用期は楽 |
シンクタンク系 | 比較的なだらか。報告書の締切前に山 |
財務・FAS系 | ディールのクロージング前に集中 |
短い山が何度も来るほうが耐えられる人と、長い平穏の後に大きな山が来るほうが耐えられる人がいます。ここは好みの問題です。
年収で比較する場合の注意点
平均年収のランキングを見て系統を決める人がいますが、比較の仕方を間違えると判断を誤ります。
注意点は3つです。
① 平均は社員構成を映している 上位等級の比率が高いファームは平均が上がります。給与テーブルの高さとは別の話です。
② 等級別レンジで比べる 自分が入る等級のレンジと、そこから上がる速さで比較してください。入口の額だけを比べても意味がありません。
③ 残業代の扱いを確認する 多くのファームで、一定の等級から裁量労働になり残業代が年俸に含まれます。同じ提示額でも手取りの感覚が変わります。
この3点を押さえたうえで比較すると、見え方がかなり変わります。等級構造から年収を分解した具体例はアクセンチュアの年収は本当に高いのかを参考にしてください。総合系の代表例ですが、考え方は他ファームにも使えます。
転職難易度の比較
系統 | 中途の入りやすさ | 主な理由 |
|---|---|---|
戦略系 | 最も難しい | 採用人数が少ない。ケース面接の比重が高い |
総合系 | 最も広い | 採用規模が大きい。業界知識が評価される |
IT系 | 広い | IT経験がそのまま武器になる |
シンクタンク系 | 中程度 | 専門性と文章力が問われる |
財務・FAS系 | 中程度 | 資格・財務経験が前提になりやすい |
未経験からコンサルを目指す場合、現実的な入口は総合系かIT系です。ここで2〜3年の経験を積んでから戦略系に移る、というルートも実際にあります。
どこから調べ始めるか
ファームの数が多いので、調べる順番を決めておいたほうがいいです。
系統を1つに絞る(上の3軸で判断)
その系統のファームを3社に絞る(採用規模と自分の業界知識の噛み合いで)
1社ずつ、年収・難易度・働き方・評判の4点を確認する
応募する領域と業界グループまで特定する
3番まで来たら、あとは個別ファームの記事を読むだけです。このサイトでは、ファームごとにこの4点を分解した記事を用意しています。
そもそもコンサルに行くべきかを迷っている段階なら、コンサル転職を考える前に、必ず整理すべき5つの判断軸とコンサルに向いている人・向いていない人を先に読んでください。系統選びはその後で構いません。
ファーム別の詳細ガイド
系統が決まったら、個別ファームの記事へ進んでください。
ファーム | 系統 | 詳細記事 |
|---|---|---|
アクセンチュア | 総合系 | |
ベイカレント | 総合系 |
この2社で迷っている場合は、両社の元社員が突き合わせて書いたベイカレントとアクセンチュアはどっちがいいのかを先に読んでください。年収差の正体と、扱う案件規模の違いを整理しています。
※他ファームの詳細ガイドは順次追加していきます。
よくある質問
戦略系と総合系、どちらがいいですか 目的によります。方針を決めるところまでで良いなら戦略系、実際に動くところまで関わりたいなら総合系です。年収の平均値だけで選ぶのは避けてください。
未経験からコンサルに入れますか 総合系とIT系であれば現実的です。業界の業務知識がそのまま評価されるため、事業会社出身者は相当数採用されています。
コンサルファームの年収ランキングは参考になりますか 平均年収は社員構成を映しているため、そのままでは比較材料になりません。等級別のレンジと、上がる速さで比べてください。
Big4とは何ですか デロイト、PwC、EY、KPMGの4大会計事務所系ファームを指します。監査法人を母体とし、コンサルティング部門とFAS部門を持っています。総合系に分類されることが多い。
どのファームが激務ですか 系統によって「山の形」が違うだけで、常に激務のファームというのはあまりありません。案件のフェーズとチームによって決まります。
まとめ
コンサルファームは戦略系・総合系・IT系・シンクタンク系・財務系の5系統
平均年収の差の多くは社員構成の違い。等級別レンジで比較する
系統選びの3軸は「どこまで関わりたいか」「何を武器にするか」「働き方の波の形」
未経験からの現実的な入口は総合系かIT系。業界の業務知識が評価される
系統 → ファーム3社 → 4点確認 → 領域特定、の順で調べると迷わない
山口翔太 2017年にアクセンチュアへ新卒入社。業界横断でデジタル変革を支援する部門に所属し、アナリストからマネージャーまでの4年間を過ごす。2021年に退職。
人気の記事
記事を読む
キャリア
コンサルファーム徹底比較|戦略・総合・IT・Big4の違いと選び方
山口翔太
#年収アップ
#戦略コンサル
#総合コンサル
#ITコンサル
#Big4
#30代転職
記事を読む
転職ガイド
コンサル転職エージェントの選び方|元マネージャーが受け入れ側の視点で解説
山口翔太
#年収アップ
#第二新卒
#30代転職
#事業会社出身
#未経験転職
記事を読む
転職ガイド
アクセンチュアの平均年収866万円は、なぜ実態より低く見えるのか|元マネージャーが11段階の等級から解説する
山口翔太
#将来不安
#年収アップ
#ITコンサル
記事を読む
転職ガイド
コンサル転職は、いつ・何歳までに決めるべきか|元社員2人が5つの判断軸で整理する
田中麻衣子
#未経験転職
#向き不向き
#後悔
#迷い