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仕事と現実

2026/09/16

「SIerはやめとけ」は本当か|同じ現場にいたコンサルが、発注側から検証する

山口翔太

本記事には広告(プロモーション)が含まれます。

先に立場を書きます。

私はSIerにいたことはありません。 山口翔太といいます。アクセンチュアに2017年から2021年まで在籍し、業界横断でデジタル変革を支援する部門にいました。

ただ、SIerの方々とは、4年間ほぼ毎日同じプロジェクトにいました。 上流に私たちがいて、その下に元請けのSIerがいて、さらにその下に何社か入っている——そういう体制の中にいた人間です。

なので、この記事は「元SIerの告発」ではありません。隣で見ていた人間が、何が起きていたかを書く記事です。当事者より冷静に、当事者より外から書けると思います。

「やめとけ」と言われる5つの理由

ネット上で言われていることを、見ていた範囲で検証します。正しいものと、そうでもないものがあります。

① 多重下請けで、決められない

これは本当です。 そして、いちばん深刻だと思いました。

現場で何度も見たのは、「明らかにおかしい」と気づいている人が、いちばん下の層にいるという構図です。実装している人が最初に矛盾に気づく。でもその人は発注元と話せない。間に2社挟まっているからです。

結果、気づいていたのに直せないまま進み、後半で大きく手戻りする。 これを繰り返すと、「自分が何をやっているのか分からない」という状態になります。「やめとけ」の中身の多くは、これだと思います。

② 技術を選べない

これも本当です。 ただし会社によります。

クライアントが決めた技術、既存資産との兼ね合いで決まった技術を使うことになるので、「新しいものを触りたい」という動機とは相性が悪い。 業務システムでは、10年前の構成を保守し続けることも普通にあります。

一方で、上流の元請けで、技術選定から入っているSIerもあります。ここは会社と部署でまったく違うので、一括りにはできません。

③ 年収が年功で決まる

部分的に本当です。

見ていた範囲では、SIerの年収は「会社の規模」と「年次」でかなり決まっていました。 若手で突出して優秀な方が、その分の処遇を受けているようには見えませんでした。

ただしこれは、事業会社の情シスでも同じです。SIer固有の問題というより、日本の大企業に共通する構造だと思います。

④ 若いうちから管理業務に寄る

これは本当で、しかも軽視されがちです。

30歳前後で「作る側」から「管理する側」に移ることを求められるケースを、たくさん見ました。進捗管理、課題管理、報告資料。手を動かす時間が減っていきます。

これを「キャリアアップ」と感じる人にはいい話です。ただ、作りたくて入った人にとっては、入社時に想定していたものと違う仕事になります。ここの説明が入社前になされていないことが多い。

⑤ 客先常駐で自社に居場所がない

会社によります。 ここは「やめとけ」が当てはまる会社とそうでない会社が、はっきり分かれます。

常駐が長期化すると、評価する上司が仕事ぶりを見ていないという状態になります。すると評価が「常駐先からの評判」になり、本人の実力より相性で決まる。ここは構造的に不利です。

「やめとけ」が当てはまらないSIerの条件

以上を踏まえると、避けるべきなのは「SIer」ではなく「特定の条件のSIer」です。

同じ現場にいて、明らかに条件が良かった会社には共通点がありました。3つです。

条件

なぜ効くか

元請けで、要件定義から入っている

決める側にいる。技術も工程も選べる

自社に開発部隊がある(丸投げしない)

手を動かす経験が残る

特定領域に強みがある

価格ではなく専門性で選ばれる=単価が落ちない

逆に、「二次請け以降」「開発は外注」「案件は人数で受ける」の3つが揃っている会社は、本人がどれだけ優秀でも経験が積み上がりにくい。ここは冷静に見たほうがいいと思います。

辞めるべき人、残るべき人

見ていた範囲で、かなりはっきり分かれました。

特徴

辞めたほうがいい

二次請け以降で、要件を渡されるだけの立場が2年以上続いている

30歳前後で、手を動かす時間がほぼゼロになった

常駐先が固定で、自社の評価が実態と合っていない

残ったほうがいい

元請けで要件定義から入れている

特定業界の業務知識が溜まってきている

大規模プロジェクトの進め方を体で覚えている最中

残ったほうがいい側の3つ目が、いちばん見落とされます。

大規模プロジェクトがどう崩れるか、どこで手戻りが起きるかを体感で知っている人材は、市場でかなり評価されます。 これを持たないまま辞めると、転職先で「大きい案件を回せない人」になります。

3年目未満で「やめとけ」を真に受けて動くのは、もったいないことが多いというのが、外から見ていた実感です。

年収の話

SIerの年収は、会社の元請け/下請けの位置でほぼ決まります。 本人の技術力の寄与は、思っているより小さい。

だから、同じ仕事を続けて年収を上げるのは難しい。 上げる方法は、実質こうなります。

  1. 元請けに移る(同じSIer業界の中で位置を上げる)

  2. 発注側に移る(社内SE・情シス)

  3. 上流に移る(ITコンサル)

このうち3番の上げ幅がいちばん大きいです。理由は、コンサルファームの年収が年次ではなく職位で決まるから。年次に関係なく、職位が上がれば上がります。

→ ITコンサルの年収はどう決まるか

2番の社内SEは、稼働が下がるぶん時間単価では良くなることが多い一方、所属先によって水準の幅が非常に大きい職種です。ここは先に確認しておいたほうがいいです。

→ 社内SEの年収の実態

出口は4方向

実際に移っていった先を整理します。

行き先

年収

稼働

向いている人

ITコンサル

上がることが多い

増える

決める側に行きたい人

社内SE・情シス

会社次第

減る

落ち着いて働きたい人

Web系・SaaS企業

職種による

会社による

作り続けたい人

元請けSIer

やや上がる

横ばい

今の経験を活かしたい人

いちばん多かったのは、ITコンサルと社内SEです。 そして、この2つは方向がまったく逆です。

  • ITコンサル → 稼働が増える代わりに、決める側に回る

  • 社内SE → 決める場面は減るかもしれないが、時間が戻る

「今の会社が嫌だ」だけで動くと、この2つを取り違えます。 自分が取り戻したいのが「裁量」なのか「時間」なのかを、先に決めてください。ここを決めずに動いた人は、移った先でもう一度悩んでいました。

SIerからITコンサルに移るときに起きること

このルートは多いので、もう少し細かく書きます。

評価される点

  • 大規模プロジェクトの進み方を知っている。 これは本当に強い。若手コンサルには絶対にない

  • ベンダー側の事情を知っている。 見積もりの根拠、工数の膨らみ方がわかる

  • ERP・パッケージの導入経験。 需要に対して経験者が足りていない領域です

苦戦する点

  • 要件を誰もくれない。 これが最大の壁です。SIerでは「与えられた要件を正確に実現する」ことが評価されますが、コンサルでは「その要件は筋が悪い」と言えるかどうかが評価されます

  • 上位の指示に従う立ち回りが通用しない。 従順さが評価項目から外れます

  • 資料で説明を完結させる必要がある。 口頭補足の文化がある会社から来ると、ここで詰まります

仕事の中身については、こちらにまとめています。

→ ITコンサルへの転職

ファームの種類と選び方は、こちらです。

→ ITコンサルの転職先

動く前にやっておくべき2つ

1. 「自分が決めたこと」を書き出す

コンサルでも社内SEでも、面接で聞かれるのはここです。「担当しました」ではなく「こう判断しました」が要る。

書き出してみて何も出てこないなら、それ自体が答えです。その環境にもう1年いても、材料は増えません。

2. 相談先を分ける

SIerからの転職は、相談先によって提示される選択肢がかなり違います。 SIer中心に扱うエージェントは同業他社を勧めてきますし、コンサル特化のところはファームを勧めてきます。

両方に当たって、自分がどの職位で見られるかを確かめるのが、いちばん外しません。

→ コンサル転職エージェントの選び方

よくある質問

Q. SIerは今後どうなりますか

なくなる仕事ではないと思います。ただ、「人数で受ける」タイプの受注は、単価が下がり続ける方向に見えました。専門性か上流のどちらかを持っていない立ち位置は厳しくなる、というのが外から見た印象です。

Q. 未経験でSIerに入るのはやめたほうがいいですか

一概には言えません。元請けで自社開発しているSIerなら、未経験の最初の職場としては悪くないと思います。教育の仕組みがあり、大規模プロジェクトを体験できるのは他にない利点です。避けるべきなのは、さきほど書いた3条件が揃った会社です。

Q. 何年目で動くのがいいですか

3〜5年目が最も選択肢が多いです。大規模案件の経験が1〜2本溜まり、かつ職位の転換がまだ効く時期だからです。3年目未満は経験が薄く、8年目以降はマネジメント実績を求められるので、どちらも選択肢が狭くなります。

Q. 30代後半でも移れますか

移れますが、求められるものが変わります。 若手のポテンシャル採用ではなく、「特定領域を一人で回せるか」で見られます。逆に言えば、溜めてきた業務知識が明確にあるなら、年齢はハンデになりません。

まとめ

「SIerはやめとけ」について、整理します。

  1. 「やめとけ」は業界ではなく、特定の条件の会社に当てはまる。 二次請け以降/開発は外注/人数で受注、の3つが揃っているかどうか

  2. 多重下請けで決められない構造は、本当に問題。 ここは擁護できない

  3. ただし、大規模案件の経験は市場価値が高い。 3年目未満で辞めるのはもったいない

  4. 取り戻したいのが「裁量」か「時間」かを先に決める。 出口が正反対になる

  5. 年収は位置で決まる。 上げたいなら、上流か発注側に移る

外から4年間見ていて思ったのは、「SIerがきつい」のではなく「決められない立場がきつい」ということでした。同じSIerでも、決める側にいる方は生き生きしていました。

なので、動くかどうかを判断する材料は「今の会社で、決める側に回れる見込みがあるか」の一点でいいと思います。見込みがあるなら残る価値があります。ないなら、位置を変えたほうが早い。

ファームを候補に入れる場合は、横並びの比較から見てみてください。

→ コンサルファーム比較

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