この記事は、ベイカレント・コンサルティングに2019年から2023年まで在籍した田中麻衣子が書いています。アナリストからコンサルタントまでを経験し、IT・流通領域の案件を担当していました。
「ITコンサル 転職先」で検索する人には、まったく別の2つの意図があります。
A:ITコンサルになりたい。どのファームを選べばいいか
B:ITコンサルをやっている。次はどこに行くのか
どちらの方も読めるように、両方書きます。 Aの方は前半、Bの方は後半を読んでください。
仕事の中身そのものはITコンサルへの転職にまとまっているので、ここでは「どこを選ぶか」だけを扱います。
【A】ITコンサルになるための転職先
ファームは5つに分けて考えると整理できる
「ITコンサルを扱っている会社」は非常に多く、全部並べても選べません。性質で5つに分けると、自分が行くべき場所が絞れます。
分類 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
① 総合系ファーム | 戦略から実装まで一貫。案件も組織も大きい | 大規模案件を経験したい人 |
② IT特化系ファーム | ITに絞って深い。技術的な裁量が比較的ある | 技術の背景を活かしたい人 |
③ 独立系コンサル | 案件が幅広く、アサインが流動的 | 幅を作りたい若手 |
④ ユーザー系・メーカー系の上流部隊 | 親会社・グループ案件が中心 | 安定を重視する人 |
⑤ 事業会社のDX推進 | 社内の立場で変革を進める | 一社に腰を据えたい人 |
① 総合系ファーム
案件の規模がとにかく大きいのが特徴です。数百人規模のプロジェクトも珍しくありません。
メリットは、大規模プロジェクトの進め方が体に入ること。これは後から独学で身につくものではないので、若いうちに経験する価値は大きいです。
デメリットは、担当範囲が細かく切られること。全体像が見えにくく、「自分は何をしているのか」がわからなくなる時期があります。私の周囲でも、ここで悩む人がいました。
→ アクセンチュアへの転職(山口・元アクセンチュア)
② IT特化系ファーム
ITの上流に絞っているファームです。総合系より技術的な話に踏み込む場面が多くなります。
注意点は、「IT特化」の中身が会社によって大きく違うこと。ERP導入が主力の会社、インフラ・クラウドが主力の会社、データ活用が主力の会社——これらは別の仕事です。社名ではなく、直近の案件構成を聞いてください。
③ 独立系コンサル
私が在籍していたベイカレントもここに入ります。特定の領域に固定されず、案件ごとに扱う領域が変わるのが特徴です。
幅が広がるのは間違いなく利点でした。IT案件のあとに流通の業務改革、という動き方をします。一方で、特定領域の深さは作りにくい。 「自分の専門は何か」と聞かれて困る時期がありました。
若手で「まだ何をやりたいか決まっていない」なら合っていると思います。逆に、専門を深めたい人には向きません。
④ ユーザー系・メーカー系の上流部隊
大手企業のグループ内で、上流工程を担っている会社です。親会社の案件が中心になります。
稼働は安定します。 一方で、クライアントが実質的に固定なので、案件の多様性は期待できません。 また、グループ内の位置づけによって処遇の水準が決まるので、そこは事前に確認したほうがいいです。
⑤ 事業会社のDX推進
厳密にはコンサルではありませんが、募集が多く、実際の転職先としてよく比較されます。
当たり外れが大きい枠です。経営が本気の会社では面白い仕事になりますが、看板だけの会社では「権限がないまま各部署に断られ続ける役」になります。
面接では、「直近1年で、その部署が実際に決めたこと」を具体的に聞いてください。答えが出てこない会社は、まだ体制ができていません。
選び方の3軸
5分類の中から絞るときに、効く軸は3つです。
軸1:自分がどの職位で見られるか
意外かもしれませんが、これがいちばん大事です。
ITコンサルの年収は職位で決まります。同じ実力でも、A社ではコンサルタント、B社ではシニアコンサルタント、ということが普通に起きます。B社の水準が多少低くても、B社のほうが提示は高くなる。
だから、複数社受ける意味は「比較」ではなく「自分がどの職位で見られるかを知ること」にあります。
軸2:最初のアサインがどこになるか
求人票の「ITコンサルタント」は、中身がバラバラです。「データ活用をやりたい」と言って入って、最初の2年がERP導入のPMOだったという例は、本当によくあります。
選考の途中で、「私の経歴だと、最初のアサインはどの領域になる可能性が高いですか」と必ず聞いてください。答えられない相手なら、情報が足りていません。
軸3:アサインの希望がどれくらい通るか
会社によってかなり違います。希望がほぼ通らない会社もあれば、自分で案件を取りに行ける会社もあります。
ここは在籍者に聞くのがいちばん確実ですが、面接でも「アサインは誰が決めていますか」と聞けば、答え方で雰囲気はわかります。
横並びでの比較は、別記事にまとめています。
転職先を間違える3パターン
周囲を見ていて、後悔につながりやすかったパターンです。
① 知名度で選ぶ
ファームは同じ会社でも部署によって別の会社のように違います。 会社名で選ぶと、入ってから「聞いていた話と違う」となります。
② 年収の提示額だけで比べる
提示額には、残業がどこまで含まれるかの違いがあります。想定稼働を聞かずに額面だけで比べると、時間単価では負けている選択をすることがあります。
③ 「とりあえず大きいところ」で決める
大規模案件の経験は価値がありますが、担当範囲が狭く切られるぶん、意思決定の経験は積みにくいです。数年で次に行く前提なら、「決めた経験」が作れるかどうかのほうが効きます。
【B】ITコンサルからの転職先
ここからは、すでにITコンサルをやっている方向けです。
行き先は5つ
私の周囲で実際にあった進路を整理します。
行き先 | 額面 | 時間単価 | 特徴 |
|---|---|---|---|
事業会社のIT・DX推進 | やや下がる | 上がる | いちばん多い。経験が直結する |
事業会社の事業側 | 職位次第 | 上がる | 業務の言葉に翻訳できるかが勝負 |
他ファームへ職位を上げて | 上がる | 横ばい | 額面をいちばん上げやすい |
SaaS・IT企業の導入支援側 | 横ばい | 上がる | プロダクトが固定されるぶん深くなる |
独立・フリーランス | 幅が大きい | 案件次第 | 人脈が前提 |
いちばん多いのは、事業会社のIT・DX推進です。ITコンサルの経験がそのまま使えるうえ、稼働が大きく減ります。
ただし、事業会社は「楽になる場所」ではありません。 時間は減りますが、「決まらないこと」のしんどさに変わります。ここのギャップは大きいので、別記事にまとめました。
何年目で動くか
私の周囲では、3〜5年目がいちばん動きやすい時期でした。
3年目未満 → 「決めた経験」が足りず、評価されにくい
3〜5年目 → 選択肢が最も広い。事業会社・他ファームどちらも狙える
6年目以降 → マネジメント職での受け入れを探すことになり、ポジションが限られる
私自身は4年で辞めましたが、このタイミングは結果的に良かったと思っています。もう少し早ければ語れる案件がなく、もう少し遅ければ選択肢が絞られていました。
コンサル出身者全体の進路については、こちらにまとめています。
出るときに持っていけるもの、持っていけないもの
持っていけるもの
論点を立てる力
知らない業務を短期間で理解する力
会議を設計して合意を作る力(これがいちばん価値が高い)
大規模プロジェクトの進め方
持っていけないもの
資料の美しさ(驚くほど評価されません)
フレームワークの当てはめ
「外部の立場だから言えた」提言の強さ
外に出ていちばん効いたのは、3つ目の「合意を作る力」でした。論点を整理して、関係者を並べて、順番に合意を取っていく——この訓練を受けた人は、事業会社にあまりいません。
よくある質問
Q. ITコンサル未経験でも入れるファームはありますか
あります。PMOとERP導入が主な入口です。ただし「IT未経験」と「コンサル未経験」は難易度が違います。SIerや社内SEからの「コンサル未経験」は通常ルートですが、IT経験がない場合は業務・BPR系に限られます。
Q. 複数社を同時に受けるべきですか
受けたほうがいいです。 理由は比較のためではなく、自分がどの職位で評価されるかを知るためです。1社だけだと、提示された職位が妥当なのか判断できません。
Q. ITコンサルから戻れますか(SIerや社内SEへ)
戻れます。むしろ上流の経験があるぶん、良い条件で戻れることが多いです。社内SEの椅子は少ないので、上流経験があると競争で前に出られます。
Q. 独立系と総合系、どちらがいいですか
専門を深めたいなら特化系か総合系、幅を作りたいなら独立系、という分け方がいちばん実態に近いと思います。私は独立系にいて幅は広がりましたが、「専門は何か」と聞かれて困る時期がありました。どちらが良いかではなく、何を取りに行くかの問題です。
まとめ
ITコンサルの転職先について、押さえるべき点を整理します。
これから入る方へ
5分類のどこに行くかを先に決める。 社名から入らない
職位で見る。 年収は職位で決まる。複数社受けて自分の職位を確かめる
最初のアサインを聞く。 求人票の「ITコンサルタント」は中身がバラバラ
すでに中にいる方へ
3〜5年目がいちばん動きやすい
持っていけるのは「合意を作る力」。 資料の美しさではない
ファーム選びで迷っているなら、まずは2〜3社の選考を並行で進めてみてください。 自分がどの職位で見られるかがわかると、比較の基準が一気にはっきりします。
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