「やめとけ」と言う人には、たいてい理由があります。そしてその理由の半分は、その人の状況では正しく、あなたの状況では当てはまらないという種類のものです。
私は2017年に新卒でアクセンチュアに入社し、アナリストからマネージャーまでの4年間を過ごして2021年に退職しました。在籍中は中途で入ってくる人を受け入れる側にもいたので、合う人と合わない人の差も見てきました。
この記事では、よく挙がる5つの理由をひとつずつ検証します。そのうえで、本当にやめたほうがいい人の条件を、できるだけ具体的に書きます。
理由①「激務だから」→ 半分正しい
働き方改革以降、公開集計では月平均残業は約30時間、有給取得率は7割台です。会社全体の数字としては、日系大手と比べて突出していません。
ただ私の実感では、通常期は1日2〜3時間の残業で定時退社もある一方、繁忙期には月80時間近くまで行くことがありました。「常に激務」ではないが「激務の時期がある」というのが正確です。
そして波を決めるのは会社ではなく、案件のフェーズです。最も重いのは本稼働直前。この時期だけは締切が動かせないからです。逆に安定運用期はかなり楽になります。
つまり「激務だからやめとけ」は、「入る案件によってはきつい時期があるので、そこを確認してから決めろ」に翻訳するのが正しい。詳しい内訳はアクセンチュアは激務なのかにまとめました。
理由②「大量採用で質が落ちている」→ 前提が違う
採用規模が大きいのは事実です。ただ、これを「質の低下」と捉えるのは、少し実態とずれていると思います。
正確には、人材の幅が広がっています。 戦略系のバックグラウンドの人も、事業会社で20年業務を回してきた人も、エンジニアも同じ会社にいる。かつてのように「コンサル出身者だけの組織」ではありません。
これを「学べる相手が多い」と取るか、「レベル感がばらつく」と取るかは、本人が何を期待しているか次第です。
そしてこの変化には理由があります。クライアントが求めるものが、きれいな分析から実際に変える実行力へ移ったからです。実行するには、現場を知っている人が要る。だから採用の幅を広げている。構造としては合理的です。
理由③「配属と上司で決まる」→ 事実。ここが最大の論点
正面から認めるべき点です。
同じ入社年次でも、どのプロジェクトに入るか、誰の下につくかで、2年後の状況がまったく違います。
まず日々の負荷が違います。マネージャーやシニアマネージャーに十分な経験があり、炎上させずに進められる人かどうか。炎上の多くは技術的な難しさではなく段取りから生まれるので、経験のある人の下では避けられた深夜作業が起きません。
そしてもうひとつ、外からは絶対に見えない部分があります。昇進のしやすさも上司に左右されます。
評価制度そのものは整っています。ただ、最終的に推薦する人が社内で声を通せるかどうかは残る。私自身、現場としてはかなりきつい環境にいましたが、上司が社内で発言力のあるタイプだったため、昇進は進みやすかったという実感があります。
逆のケースもあります。穏やかで働きやすいチームなのに、昇格の推薦がなかなか通らない。「働きやすさ」と「昇進しやすさ」が一致しないというのは、規模の大きい組織では起きにくくない話だと思います。
対策はひとつだけあります。選考の段階で、配属候補のチームと、そこを率いている人について聞けるだけ聞くこと。 「アクセンチュアに入りたい」で受けると、決まった場所に入ることになります。
理由④「学歴フィルターがある」→ 中途では弱い
新卒採用には一定の傾向があるとされますが、中途採用における学歴の比重は明確に下がります。
理由は単純で、中途には実績があるからです。新卒はポテンシャルを見抜く作業なので、学歴やテストのスコアといった代替指標に頼らざるを得ない。中途は「何をやって、どんな成果を出したか」という実物があるので、そちらを見ます。
実際、中途のほうが新卒より入りやすいというのが私の実感です。落ちる人の多くは面接まで行っておらず、書類の書き方でつまずいています。ここは直せる部分です。詳しくはアクセンチュア中途は厳しいのかに書きました。
学歴で迷って応募をやめるくらいなら、職務経歴書を「課題→分析→打ち手→成果」の型で書き直すほうが、通過率への影響は圧倒的に大きいです。
そして仮に落ちたとしても、どの段階で落ちたかによって次の打ち手は変わります。 書類で落ちたのか、一次で落ちたのか、最終で落ちたのか。段階別の理由と立て直し方はアクセンチュアの中途選考に落ちたら、段階別に何をすべきかに整理しました。再応募の条件についても書いています。
理由⑤「地味な調整業務が多い」→ 事実。ここは覚悟がいる
私が入る前と入った後で、いちばんギャップが大きかったのはここでした。
華やかなイメージで語られがちですが、実際の時間の多くは調整業務に消えます。関係部署の意見をすり合わせる。資料の粒度を揃える。会議の前に根回しをする。意思決定者が誰なのかを探し当てる。
これはアクセンチュアに限らず、コンサル業界に共通する部分です。大手企業を相手にする以上、避けられません。組織が大きいほど、動かすための手続きが増えるからです。分析して示唆を出す時間より、その示唆を通すための時間のほうが長い。
「戦略を考える仕事」を期待して入ると、ここで落差を感じます。逆に、調整も含めて顧客を動かすことだと思える人には、まったく問題になりません。
本当にやめたほうがいい人
5つを検証したうえで、私が「やめたほうがいい」と思うのは、次の3つに当てはまる人です。
① 顧客の課題に踏ん張れない人
これが一番大きい。
コンサルティングは、顧客の課題を解決するために対価をもらう仕事です。だからプロジェクトが炎上したとき、最後に踏ん張るのは支援する側になります。自分たちの責任範囲かどうかとは別に、顧客が困っている以上、投げ出せない。
この局面で「この顧客をなんとかしたい」と思えるかどうか。思える人にとって炎上は折れる理由になりませんが、思えない人にとっては、ただの理不尽な長時間労働です。
同じ状況が、まったく違う経験になる。ここにやりがいを見出せないなら、この仕事は素直に厳しいと思います。
② 入社をゴールにしている人
アクセンチュアは入った後に競争が始まる会社です。人数が多いぶん、社内でのポジションは自動的には決まりません。
入社が終点になっている人は、最初の半年で失速します。
③ 地味な調整業務に耐えられない人
理由⑤のとおりです。時間の多くはここに使われます。ここを「本質的でない」と感じ続けるなら、消耗します。
それでも入る価値がある人
逆に、次のような人にとっては強い選択肢です。
顧客を本当に変えたい、という原体験がある人
これが自分の中にある人は、炎上しても折れません。前職でうまくいかなかった経験でも、誰かに助けられた経験でも構いません。理由が自分の中にあるかどうかです。
ロジックが通れば裁量をもらえる環境で働きたい人
ここは実際に風通しが良く、年次を理由に意見が却下される場面は、私の4年間ではほとんどありませんでした。1年目の提案がそのままクライアントへの提案の骨格になることもあります。
短期間で複数業界・複数テーマを経験したい人
プロジェクト単位で動くので、経験の幅は他社と比べても広く取れます。
業界知識を持っている事業会社出身者
中途では、その業界を知っていること自体が武器になります。実際、最初の配属は前職と同じ業界の案件になることが多い。業界の言葉が通じる人をそこに置くほうが、立ち上がりが速いからです。
「やめとけ」と言われたときの考え方
最後に、判断の仕方を書いておきます。
「やめとけ」と言ってくる人がいたら、その人がいつ在籍していたのか、どの領域にいたのかを聞いてください。
2015年より前に在籍していた人の労働環境の話は、いまとは前提が違います。安定運用案件にいた人と炎上案件にいた人でも、話がまったく変わります。
そして、その人が「やめとけ」と言う理由が、上の5つのどれに当たるのかを確かめる。①②④なら、あなたには当てはまらない可能性が高い。③⑤なら、確認すべき論点として受け取る。
なお「やめとけ」と並んでよく目にするのが「やばい」という言い方です。こちらは指している中身がさらに曖昧で、激務の話と組織の話と待遇の話が混ざったまま使われています。何がやばいと言われているのかを5つの論点に分けて検証したものがアクセンチュアが「やばい」と言われる理由です。この記事と合わせて読むと、噂の全体像が整理できます。
入社前に潰せるギャップと、自分の中を見ないと分からないものの切り分けは、アクセンチュア転職で後悔する人の共通点に整理しました。面接でそのまま使える質問リストも置いてあります。
よくある質問
エンジニアはやめとけと言われますが本当ですか
テクノロジー領域は本稼働直前の山がはっきり出る傾向があります。ただし安定運用フェーズでは波が小さくなるため、職種というより担当案件のフェーズで決まります。
未経験で入るとついていけませんか
事業会社出身者は相当数採用されており、業務知識が評価される領域が明確にあります。問われるのはコンサル経験ではなく、課題を構造化して解いたプロセスを語れるかどうかです。
何年で辞める人が多いですか
一概には言えませんが、入社をゴールにしていた人ほど早く離れる傾向があります。目的を持って入った人は、その目的が達成される3〜5年で次に進んでいます。
激務で体を壊しませんか
月間残業が一定時間を超えるとプロジェクト責任者側が人事的な措置を受ける仕組みがあるため、青天井にはなりにくい構造です。ただし本稼働直前の負荷は実在します。
「やめとけ」と言う人の意見は信じるべきですか
在籍時期と領域を確認してください。2015年前後の働き方改革の前後で前提が変わっています。
まとめ
「激務」は常時ではないが、繁忙期は実在する(私の場合は月80時間近く)
「大量採用」は質の低下ではなく人材の幅の広がりに近い
配属と直属の上司の影響が最大。日々の負荷にも昇進のしやすさにも効く
学歴フィルターは中途では弱い。むしろ中途のほうが新卒より入りやすい
地味な調整業務が多いのは事実。ここが最大の期待値ギャップ
本当にやめたほうがいいのは「顧客に踏ん張れない人」「入社がゴールの人」「調整業務に耐えられない人」
逆に、顧客を変えたいという原体験がある人には強い環境
年収・選考難易度・働き方を含めた判断材料は、アクセンチュア転職の完全ガイドにまとめてあります。
山口翔太
2017年にアクセンチュアへ新卒入社。業界横断でデジタル変革を支援する部門に所属し、アナリストからマネージャーまでの4年間を過ごす。2021年に退職。
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