この記事は、コンサルファームをそれぞれ4年で辞めた2人で書いています。
山口翔太:アクセンチュアに2017年から2021年まで在籍。業界横断でデジタル変革を支援する部門で、アナリストからマネージャーまで
田中麻衣子:ベイカレント・コンサルティングに2019年から2023年まで在籍。アナリストからコンサルタントまで、IT・流通領域を担当
「コンサルって、実際は何をしている仕事なんですか」
これは、私たち2人とも在籍中に何度も聞かれた質問です。 そして、うまく答えられませんでした。「戦略を考える仕事」でも「経営に近い仕事」でも、間違ってはいないのに、実態のごく一部しか表していないからです。
この記事では、事業会社との違いを軸に、実際に何をしているのかを書きます。憧れを煽るための記事ではありません。
結論:コンサルは「答えを出す仕事」ではありません
多くの人が誤解しているのはここです。
コンサルが売っているのは、正しい答えではありません。クライアントが自力では決められない意思決定を、決め切れる状態まで持っていくことです。
実際の現場はこうなっています。
情報が揃っていない
前提が曖昧
正解が一つではない
社内で意見が割れていて、誰も決められない
この状態で、何を論点として切り出すか、どう構造化するか、どこまでを「今の結論」とするか。それを整理して、決められる形にするのが仕事です。
だから、技術的に正しい答えを出しても、それが社内で通らなければ価値になりません。 ここが、外から見たイメージといちばんズレるところだと思います。
1日の時間は、何に使われているか
抽象的な説明だけでは伝わらないので、実際の時間の使い方を書きます。
若手(アナリスト〜コンサルタント)の、通常期の1日——体感での内訳です。
何に使うか | おおよその比率 |
|---|---|
資料の作成と修正 | 4〜5割 |
データの整理・数字の突き合わせ | 2割 |
社内のレビュー・打ち合わせ | 1〜2割 |
クライアントとの会議 | 1割前後 |
調査・情報収集 | 1割前後 |
「経営層に提案する」時間は、若手のうちはほとんどありません。
クライアントの前に立つのは基本的に上位者で、若手はその材料を作ります。ホワイトボードの前で議論している時間より、パワーポイントの1ページを何度も直している時間のほうが圧倒的に長いです。
そして、この地味さに耐えられるかどうかが、最初の分かれ目になります。私たち2人とも、入社直後に驚いたのはここでした。
事業会社との違い、4つ
① 決めるのは自分ではない
事業会社では、自分が決めて、自分が実行して、結果を自分で引き受けるのが基本形です。
コンサルは違います。
意思決定はクライアント
実行もクライアント
コンサルは支援する側
この違いは、想像以上に効きます。自分が良いと思った案が通らないことは普通にあり、それでも仕事としては成立してしまう。 決めたい人、動かしたい人ほど、ここに物足りなさを感じます。
② 評価が、案件で変わる
コンサルの評価は、プロジェクト単位・上司の主観込み・半年ごとに相手が変わるという形で付きます。
そして正直に書くと、同じ実力でも、アサインされた案件が違えば評価は変わります。 炎上案件で踏ん張った人より、順調な案件で成果が見えた人のほうが高く付く、ということが起きる。
これを「理不尽」と受け取るか「そういうゲーム」と割り切れるかで、続くかどうかが分かれます。
③ 時間の流れ方が違う
事業会社の仕事は、基本的に終わりがありません。 担当業務は続いていきます。
コンサルはプロジェクト単位で区切られます。 3か月なら3か月で終わり、成果物が出て、次に移る。
区切りがあるぶん達成感は得やすい一方、積み上がっている感覚は持ちにくいです。田中の在籍していたベイカレントのように、案件ごとに業界が変わる環境ではなおさらでした。
④ 人間関係が入れ替わる
事業会社では、同じ人と何年も仕事をします。 合わない人がいると、それが長く続きます。
コンサルは案件が終われば離れられます。これは大きな利点ですが、裏返すと深い関係が作りにくいということでもあります。
「コンサルは成長できる」は、半分正しい
よく言われる話ですが、何が伸びて、何が伸びないかを分けて考えたほうがいいです。
短期間で伸びるもの | 意識的に取りに行かないと身につかないもの |
|---|---|
論点を立てる力 | プロダクトを育てる力 |
構造化して整理する力 | 組織を動かす力 |
知らない領域を短期間で理解する力 | 事業を回し続ける力 |
会議を設計して合意を作る力 | 特定領域の深い専門性 |
左側は、たしかに他の環境より速く伸びます。 これは実感としてあります。
ただし右側は、コンサルにいるだけでは身につきません。 支援する立場だからです。ここを期待して入ると、数年後にギャップが出ます。
「どんな成長を求めているのか」を曖昧にしたまま入るのが、いちばん危ないと思います。
ひとくちに「コンサル」と言っても、中身は分かれています
外から見ると一つの職業に見えますが、実際には別の仕事といっていいくらい分かれています。
系統 | 何をするか |
|---|---|
戦略系 | 事業の方向を決める。提言して終わることが多い |
総合系 | 戦略から実装・運用まで一貫して見る |
IT・デジタル系 | システムとDXが軸 |
財務・FAS系 | M&Aと財務 |
シンクタンク系 | 調査と政策 |
系統を選び間違えると、その後の準備が全部ずれます。 ここは最初に確認してください。
主要ファームについては、それぞれ在籍していた人間が書いています。
アクセンチュアへの転職(山口)
ベイカレントへの転職(田中)
ITコンサルへの転職(山口)
働き方は「ハード」なのか
労働時間は、会社ではなく案件のフェーズで決まります。
同じ会社でも、要件定義の山場とリリース直後では別の仕事のようになります。「この会社は激務」という括り方は、あまり役に立ちません。
ただし、どの案件でも共通していることが3つあります。
常に期待値が高い──前回より良いものを求められる
自律性を求められる──指示を待っていると仕事がなくなる
学習量が多い──知らない業界に3か月で追いつく必要がある
「安定していそうだから」という理由で選ぶと、想像以上に消耗します。
どうやって入るのか
中途採用の入口は、大きく3つです。
事業会社の企画・事業部門から──業務の知識がそのまま武器になる
SIer・社内SEから──IT系の領域で需要が大きい
他ファームから──職位を上げて移る
「未経験だから無理」ということはありません。 ただし「IT未経験」と「コンサル未経験」では難易度が違います。
入ったあと、どこへ行くのか
コンサルは入口であって、終着点ではありません。
私たち2人とも4年で辞めていますし、周囲も数年で次に移っていきました。3〜5年で次に進むのが、この業界では標準的なキャリアパスとして機能しています。
主な行き先は、事業会社のIT・DX推進、事業会社の事業側、他ファーム、独立です。
入る前に、出た先で何が起きるかを知っておいたほうがいいと思います。入ってからだと、日々の忙しさで考える時間がなくなります。
よくある質問
Q. コンサルと士業(会計士・弁護士)の違いは何ですか
士業は資格に紐づいた独占業務があります。コンサルには資格要件がなく、クライアントが「この人に頼みたい」と思うかどうかだけで成立します。参入障壁が低いぶん、実力の差がそのまま出ます。
Q. 事業会社の「社内コンサル」とは違いますか
違います。社内コンサルは同じ会社の一員なので、最終的には自社の利害を背負います。外部コンサルは利害から離れた立場で言える一方、実行の責任を持たないという制約があります。
Q. 「コンサル」と名乗る個人も多いですが、同じですか
仕事の中身はかなり違います。ファームのコンサルはチームで大きな案件を回すのが基本で、個人のコンサルは専門領域で1対1の支援をすることが多い。どちらが良いという話ではなく、別の職業だと考えたほうが正確です。
Q. AIに代替されませんか
調査や資料作成の一部は、すでに効率化されています。一方、社内で意見が割れている状態を、対話でほぐして合意にする部分は残ると思います。コンサルの価値が「情報を集めること」ではなく「決められる状態にすること」にある以上、そこが本体です。
まとめ
コンサルという仕事について、整理します。
答えを出す仕事ではなく、決められる状態にする仕事
若手の時間の4〜5割は資料作成。 経営層に提案する時間はほとんどない
決めるのは自分ではない。 ここが事業会社との最大の違い
伸びるものと伸びないものがある。 事業を回す力は、いるだけでは身につかない
入口であって終着点ではない。 3〜5年で次に進むのが標準
私たち2人とも4年で辞めましたが、入ったことは後悔していません。短期間で「考える訓練」を受けられる環境は、そう多くないからです。
ただしそれは、自分で決める機会を手放すことと引き換えでした。その交換に納得できるかどうかが、この仕事を選ぶかどうかの判断だと思います。
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