私は2019年にベイカレント・コンサルティングへ新卒で入社し、2023年まで在籍しました。アナリストからコンサルタントまでを経験し、IT領域と流通領域の案件を担当しています。
「ベイカレント 激務」で検索している人が知りたいのは、たぶん「何時間働くのか」だと思います。ただ、その質問には会社単位では答えが出ません。
先に結論を書きます。
労働時間の水準は、アクセンチュアなど他の総合系と大きく変わりません
通常期は定時で帰れる日もあります
繁忙期は月80時間近くまで行くことがあります
そして、この差を生む原因が、ベイカレント固有です
本題は最後の一点です。
まず、時間の実感から
在籍4年の実感として、こういう分布でした。
時期 | 残業の実感 |
|---|---|
案件の立ち上がり期 | 少なめ。定時退社の日もある |
中盤の通常期 | 1日2〜3時間程度 |
本稼働・納品直前 | 月80時間近くまで行くことがある |
案件の切れ目 | かなり落ち着く |
平均を出すことに意味がありません。 月30時間の月もあれば、80時間の月もある。年間を通せば均されますが、その均された数字は、どの月の実感とも一致しません。
コンサル業界で「激務かどうか」を会社単位で語れないのは、この波が理由です。どのフェーズにいるかで、まったく違う会社に見えます。
そして重要なのは、この波の形自体は、他の総合系ファームと変わらないということです。アクセンチュアでも、フェーズによって同じような分布になります。アクセンチュアは激務なのかに整理されている内容と、私の実感はほぼ重なります。
つまり、「ベイカレントは他より激務か」という問いの答えは、ノーです。
本題:忙しさの量ではなく、炎上の原因が違う
ここからが、ベイカレント固有の話です。
ベイカレントでは、営業とコンサルが分業になっています。 案件を取ってくる人と、実際にデリバリーする人が分かれている。
多くのコンサルファームでは、上位職のコンサルタントが提案段階から入り、そのまま実行まで見ます。提案した本人が責任を持つので、無理な条件では受けません。
分業だと、そこが切れます。結果として、現場から見て「この条件では厳しい」という案件が、構造的に一定の割合で入ってきます。
炎上案件では、実際に何が起きるか
私が見た範囲では、だいたいこの順番で進みます。
提案時に握った範囲と、顧客が期待していた範囲がずれていることが、着手して2〜3週間で分かる
現場で吸収しようとする。ここで工数が膨らむ
それでも足りず、期日の前倒し作業が発生する
体制が追加されるか、スコープが再定義されるかで収束する
重要なのは、このズレを作った人が現場にいないことです。 提案した営業は次の案件に移っていて、現場のマネージャーが引き受け直すことになります。
そして、ここで上に立つ人が交渉できるタイプかどうかで、その後の数か月がまるで変わります。 スコープの再定義を持ちかけられる人の下では、2〜3週間で収束します。そうでなければ、現場の工数で吸収し続けることになる。
つまり、残業時間は自分の頑張りでは決まらない
これが、いちばん伝えたい点です。
炎上するかどうかは、個人の能力とはほぼ無関係に決まります。 提案の握り方と、上に立つ人の交渉力。どちらも自分では動かせません。
誤解のないように書くと、全案件が炎上するわけではありません。 私が担当した中にも、順調に進んだものがたくさんあります。ただ、構造上、一定の割合で発生するという感覚はありました。
ここを理解していないと、炎上に当たったときに「自分の力不足だ」と受け取ってしまいます。新卒で最初の案件がこれだった人が辞めやすいのは、そのためだと思っています。 この点はベイカレントで「クビ」と言われる理由で詳しく扱いました。
入る前に、分業の運用を確かめておく 提案と実行の担当が分かれているかは、領域によって運用が違います。外からは分かりにくい部分なので、面接で確認できる形に整理しておくと安心です。
アサインの有無で、忙しさはどう変わるか
もう一つの論点です。ワンプール制では、案件と案件の間に切れ目があります。
この期間の扱いについて、外では「放置される」「居づらくなる」といった書かれ方をよく見かけます。私の在籍中の実感は、もう少し穏当です。
アサインは希望になるべく準じてくれます。 プロジェクトが途切れているタイミングでも、実力を示せていれば極力叶えてくれる。ここは会社として意識的にやっていたと思います。
そして忙しさの観点で言えば、切れ目の期間があること自体は、他の総合系と大きく変わりません。 アクセンチュアでも案件の合間はあります。
ただし、その期間をどう使うかは自分次第です。次に何をやりたいか希望を出す、社内で顔を出す、勉強に充てる。何もしないで待っていると、次も回ってきにくい。 能力の問題ではなく、動き方の問題です。
フェーズ別に、1日がどう変わるか
時間の数字だけだと実感が湧かないと思うので、中身を書きます。
立ち上がり期
情報を集める期間です。クライアントの資料を読み、関係者にヒアリングし、論点を整理する。作業の締め切りが毎日あるわけではないので、定時で帰れる日が出ます。 ただし頭は使うので、退社後に疲れが残ることはあります。
中盤の通常期
分析と資料作成が回り始めます。週次の定例に向けて成果物を仕上げるサイクルになるので、曜日によって負荷が偏ります。 定例の前日が重く、翌日は軽い。この波を把握できると、生活が組み立てやすくなります。残業の実感は1日2〜3時間程度でした。
本稼働・納品直前
ここが最も重い時期です。想定外が毎日出ます。 直前になって出てくる仕様の不整合、テストで見つかる不具合、クライアント側の追加要望。予定していた作業と、当日発生する作業の比率が逆転します。
月80時間近くまで行くのは、ほぼこの時期です。そして、この期間の長さは案件の作り方で決まります。 無理のある条件で受けた案件ほど、この期間が長くなる。前述の分業の話が、ここに効いてきます。
切れ目
次のアサインが決まるまでの期間です。前述のとおり、ここをどう使うかで次が変わります。
等級によって、忙しさの性質が変わる
在籍中に自分で経験した範囲で書きます。
アナリスト期
作業量が中心です。忙しさは分かりやすく、時間で測れます。ただし自分でコントロールできる余地は少ない。 上から降りてくる量で決まります。
コンサルタント期
作業量に加えて、段取りと調整の比重が上がります。 時間の使い方に自由度が出る一方、責任の範囲が広がるので、頭が休まらない時間が増えます。「定時に帰ったのに疲れている」という感覚が出てくるのはここからです。
私はこの2つの段階までしか経験していないので、マネージャー以上については書きません。ただ、上に行くほど「時間」より「持っている案件の数と状態」で忙しさが決まるという話は、周囲を見ていて感じました。
「地味な調整業務が多い」という話
激務の話とあわせて、これも書いておきます。
コンサルの仕事は、華やかなイメージで語られがちです。実際には、関係者の間を行き来して合意を取る、地味な調整業務がかなりの比重を占めます。
私がいたIT領域では、業務側と開発側の間に立って要件を通す役割が中心でした。技術そのものを作るわけでも、経営に提言するわけでもない。「調整」という言葉がいちばん近い。
これは、ベイカレント固有の話ではありません。総合系コンサルという業態そのものの性質です。ただ、「激務かどうか」を考えるときに、時間の長さより、この中身に耐えられるかのほうが実は重要だと思っています。
長時間働くこと自体に耐えられる人でも、成果が見えにくい調整作業が続くことには消耗する——というケースを何度も見ました。
繁忙期を乗り切るために、現場でやっていたこと
実務的な話も書いておきます。私が4年で身につけたことです。
① 定例の前日を基準に週を組む
通常期の負荷は、成果物の締め切りに連動します。定例が水曜なら、火曜が重い。 これが分かっていれば、重い予定を火曜の夜に入れなくなります。当たり前に聞こえますが、最初の1年はこれができていませんでした。
② 「聞けば5分で済むこと」を抱えない
自分で調べて2時間かかることが、クライアントや社内の担当に聞けば5分で分かることがあります。新卒のうちは、聞くことを遠慮しがちです。 ここで失った時間が、そのまま残業になっていました。
③ 炎上の兆候を早めに上に出す
着手2〜3週間で「これは想定と違う」と感じたら、そこで言うかどうかで数か月が変わります。 現場で吸収しようとして黙っていると、吸収しきれなくなったときにはもう手遅れです。
言いにくいと感じるかもしれませんが、早く言った人が責められる場面は見たことがありません。 むしろ遅れて表面化したときのほうが大変になります。
口コミとの照合
「ベイカレント 激務」で出てくる声には、幅があります。
ここまで読めば理由が分かると思いますが、書いた人がどの案件に入っていたかで、記述が正反対になります。 炎上案件にいた人と、順調な案件にいた人。同じ会社の話とは思えない文章になります。
だから口コミは、「どの案件のどのフェーズにいた人か」が読み取れるものだけを判断材料にしてください。 読み方の詳細はベイカレントの評判は本当かに整理しました。
入る前に確認すべきこと
面接で聞いていい質問です。
提案フェーズと実行フェーズで、担当する人は変わりますか
スコープが想定と違ったとき、どのように調整されますか
直近で担当された案件の、通常期の働き方を教えてください
案件の切れ目には、どのように過ごすことになりますか
1つ目と2つ目が本命です。 分業であること自体は公開情報から推測できますが、ズレが起きたときにどう扱われるかは、聞かないと分かりません。ここが労働時間を決めます。
「現場で頑張って吸収します」という答えが返ってきたら、それが実態です。
よくある質問
ベイカレントの残業時間はどれくらいですか フェーズによります。通常期は1日2〜3時間程度で定時退社の日もあり、本稼働直前は月80時間近くまで行くことがあります。平均を出しても実感とは一致しません。
他のコンサルファームより激務ですか 労働時間の水準としては、アクセンチュアなど他の総合系と大きく変わりません。違うのは、炎上が起きる原因です。
なぜ炎上案件が発生するのですか 営業とコンサルが分業のため、提案時に握った範囲と現場の実態がずれることが構造的にあります。個人の能力とは別の要因です。
全部の案件が炎上するのですか 違います。順調に進む案件もたくさんあります。ただし構造上、一定の割合で発生します。
アサインがない期間は暇ですか 案件の切れ目はあります。ただしその期間をどう使うかで次のアサインが変わります。希望を出し、社内で動くことが必要です。
ワークライフバランスは取れますか フェーズ次第です。通常期は取れます。本稼働直前は取れません。年間を通して安定させたい人には、業態として向きません。
まとめ
労働時間の水準は、他の総合系ファームと大きく変わらない
通常期は1日2〜3時間程度で定時退社の日もある。本稼働直前は月80時間近く
平均値に意味はない。どのフェーズにいるかで全く違う
固有なのは量ではなく炎上の原因。営業とコンサルが分業のため、無理のある案件が構造的に一定の割合で入る
炎上するかどうかは個人の能力ではほぼ決まらない。提案の握り方と、上に立つ人の交渉力で決まる
アサインの切れ目はあるが、希望を出せば準じてくれる。動かないと次も回ってこない
時間の長さより、地味な調整業務が中心という中身に耐えられるかのほうが重要
面接では「提案と実行で担当が変わるか」「スコープがずれたときどう調整されるか」を聞く
年収・選考を含めた全体像は、ベイカレント転職の完全ガイドにまとめました。
忙しさの中身が自分に合うかを、先に確かめる 時間の長さより、調整中心の仕事に耐えられるかが分かれ目です。これまでの働き方を整理してもらうと、判断材料になります。
田中麻衣子 2019年にベイカレント・コンサルティングへ新卒入社。アナリストからコンサルタントまでを経験し、IT・流通領域の案件を担当。2023年に退職。
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